朝霧


朝霧 (創元推理文庫)

朝霧 (創元推理文庫)


北村薫の《円紫師匠と私》のシリーズ。一番新しい本が文庫になってました。


相変わらずの日常の謎に《私》と一緒にもやもやし、すっと納得できる円紫師匠の説明で気分晴れやか。でも、それだけではない(謎が解けてすっきり、だけではない)謎の奥に潜む人情というのかな?人の業というのか・・・ともかく、このシリーズは無機質な理論的なミステリじゃないところが好きです。


【山眠る】
大学生活もとうとう終わりの《私》。それと対照的に加茂先生の最終講義があり、「山眠る」で俳句を辞めるという本郷先生。《私》にとっての始まりの春は、別れの季節でもある。
でも、最後の《私》が本郷先生に語った言葉で救われたような気持ち。

【走り来るもの】
仕事を始めた《私》。主人公が女子大生じゃなくなったことで、このシリーズは随分落ち着いちゃったなー、という感じ。働き出してから1年、2年があっという間に(ほんの数行で)過ぎていってしまうのだ。
リドルストーリーの落ち、嫌な気分にはなるが、なかなか面白かった。引いたのか引かなかったのか、の2択しかないと思い込ませているところがひっかけだよね。

【朝霧】
ついに、《私》に運命の出会いキター!ですよ。しかし、こんな理屈っぽい人に、感情のままよと恋愛できるもんなのか?それも一目ぼれ(正確にはちょっと違うけど)というのだから人生何がどうなるか分からない。面白い。
和歌の謎の方も、素敵だなー。《私》の祖父は謎を解いたのか、解けなかったのか、解いたとしてもその結末は・・・などと想像する。そんな余韻がいい。