スキップ

スキップ (新潮文庫)
北村薫著、「スキップ」の感想を書きます。実は、私にとっての初北村薫作品はこれでした。文章の美しさにすっかり嵌ってしまいました。


「時と人の三部作」と言われているシリーズの第1作です。あとの2作(ターンとリセット)も大好きなんだけど、スキップが個人的には1番良いと思っています。


昭和40年代の初め、17歳だった真理子は、雨で中止になった運動会の後、自宅で昼寝をする−−−そして、目が覚めるとなんと42歳になっていたのだ!しかも、結婚して、子ども(女子高生!)もいて、高校の国語の先生という職業に就いていた!!というお話。


現実的に考えて、17歳だった自分が42歳になってたらショックどころじゃないよなぁと思う(苦笑)。でも、真理子はあくまで前向きで、教師という仕事に取り組み、家族と会話をする。そこがすごく好ましい。

また、昭和40年代の風俗については全然といっていいほど知らない私なのだが、どこか懐かしさを感じて、自然に真理子に感情移入してしまう。
缶ジュースのプルトップが、外れないで缶の中に入り込むタイプに変わった時、確かに私も「汚いなぁ」って思ったはずなのに・・・今では無くした感覚を呼び起こされます。

それから良いのは、主人公と高校時代の同級生との友情でしょう。円紫師匠のシリーズの正ちゃんに通じるような実にさっぱりした性格の「池ちゃん」。友情を表すエピソードは少ないのに、それが現代でふっとよみがえる時−−−胸がぎゅっと締め付けられるように切なくなります。もう取り戻せない瞬間を、老いた時に見せ付けられるってこんなに苦しいものかと。具体的に言うと、文化祭で本の間から出てきた池ちゃんの紙切れが見つかる場面で、私号泣しちゃいました。


途中までは、真理子は17歳に戻れるんじゃないかと思っていたけど、ある程度読み進めると「あ。。。きっと戻れないな」と気づく。


過ぎてしまった時間には、決して戻れはしない。