百鬼夜行―陰

百鬼夜行-陰 (講談社ノベルス)
シリーズ第8作。

番外編というのかな、今までの話の脇役達が主役の短編集です。彼らの過去、抱えているトラウマ(妖怪に姿を代えているとも言えるかな)が分かって興味深いです。本編と違うのは、その妖怪の憑き物が落ちないこと。だから読んでてすっきりしない!という意見もあるとは思うけど、私はこのすっきりしない加減がいいと思います。人間ってこんなものだよって思えるから。

<小袖の手>

この話は演劇をみたりして、印象深くなりました。ラストの手が「出るな出るな出るな」って思ってるのに、するすると出てきちゃうところが、読んでて凄くシンクロできて好きです。

<文車妖妃>

これは、初めて読んだ時、一人芝居を観ているような感覚がありました。暗い舞台の上で、白っぽい服を着た女性がいる。そこだけスポットライトの灯が落ちているーー。そんな感じ。よく分からん感想でスイマセン。

<目目連>

平野さんの「視るな視るな!俺を視るな!」の台詞が大変印象深い作品(笑)。目を潰されるって、生理的嫌悪感から言うと、最悪な殺され方の一つじゃないかしら?おー、こわ。

<鬼一口>

これは、是非「ルー=ガルー 忌避すべき狼」と併せて読む事をお勧めします。この作品も舞台化したの観たので、凄く好きになりました。戦時中の上官の言葉と、薫紫亭の主人の言葉と、父親の言葉と、久保の言葉が、主人公の頭の中でぐるぐる〜ってするところがいい。

<煙々羅>

「鉄鼠」の裏話です。「鉄鼠」の美僧和田和尚の関係者らしい、和田ハツ。その美しさが燃えた時の煙に執着を抱く男・・・。このストーリィ自体に不満は無いんだけど、結局和田和尚って、和田ハツって、何者やねん!!

<けらけら女>

けらけらという字が変換できませんでした(涙)。「絡新婦」の番外編。「絡新婦」ではあっさりと殺されていた一教師にも、こんな憑き物があったとは。。。京極作品ってやっぱ深いです。

<火間虫入道>

私も、実はそうとうな面倒くさがりやなもので、これは身につまされますね・・・。特に、親に反抗することさえ面倒くさいっていうのが、何とも・・・。

<襟立衣>

この話が一番「陰」の中でお得感がありました。本編(鉄鼠)では、全然意味不明だった覚丹のことが凄くいろいろ分かったから。お経が延々続くと、一種催眠効果というか、読んでて吸い込まれそうになります。

<毛倡妓>

これは怖い!「陰」の中で一番怪談テイストのある作品。「半年の間、何と遊んでいたことになるのか。」っていうのが、めちゃくちゃぞっとした。

<川赤子>

最後に、最初に戻るってことで、「川赤子」のラストが「姑獲鳥」の始まりに繋がってるのです。こういうファンサービスが心憎いんだよね、京極先生は・・・。









<名言集>

「あんたはな あんたが思ってるより ずっと女なんだよ」内藤赳夫

「始末」でちょっと男前だった内藤さん。この発言でかなり一途に思いつづけてたことが分かり、また株が急上昇かも。