姑獲鳥の夏

姑獲鳥の夏 (講談社ノベルス)
満を持して、京極堂の登場です。
何しろ、私がネットデビューするきっかけになった作家さんだし、今の私の友人関係を形成するのに多大なる影響を与えているわけで、「早く語りたい」気持ちと、「安易には語れない」気持ちがせめぎあっていたわけです。では、逝きましょうか!!

記念すべき、第一作目「姑獲鳥の夏」。
この重量級の作品が、出版社に持ち込みだった(当時、この枚数だと多すぎて扱ってくれる新人賞が無かった)というのは一部では有名な話ですね。コレいきなり読んだ編集さんは、量と質にびっくりだっただろうなぁ・・・。

私が手を出したきっかけは、綾辻氏が推薦文を寄せていたから(笑)本屋でも目立ってたしね。

まず、何よりも圧倒されたのは、その情報量。京極堂の蘊蓄。特に、榎さんの特殊能力について説明するくだりが好き。記憶に対する認識のところ。「目が悪いから余計見えやすい」っていうのが面白い解釈だと思った。それから、憑き物に関する蘊蓄も興味深く読めた。

トリックに関しては、正直言って「まさか死体が見えないなんて」と思う。でも、許せてしまうのは、日本の夏特有のジメっとした空気や、日陰や古い住居の思わぬ涼しさ、繁茂する草木の怪しさなどの描写が上手いからだろうと思う。舞台が現代じゃないところも心憎い(というかズルイというか)。思わず「そんなこともあるかな」って思ってしまうのだ(^^;

それから。京極夏彦の小説は、いつも、始まりと終わりが上手い。奇麗すぎるきらいはあるけどね。姑獲鳥も、始まりの「藤牧の思考」の文語体が堪らなく哀切でいい。(有栖川有栖の「ダリの繭」の冒頭似てませんか・・・)




<名言集>

久遠寺家の呪いを解いてくれ!」関口巽

姑獲鳥の関君はかっこいいですよね