夜の蝉 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)

「円紫さんと私」シリーズ第2作。
日本推理作家協会賞受賞作です。大人の恋愛を知って、「私」がまた一つ成長します。

「朧夜の底」

朧夜=春ですね。もうすぐ桜が咲く頃、再び私が出会う日常の謎・・・そして、その裏にある人間の悪意の話。

何が怖いって、悪意をご本人が「悪いこと」だと思っていない、全く善悪に無自覚なこと程怖いことはありません。この話では、本をタダにするっていうことだけだからまあ、実害はそれほどないけど、このままエスカレートしていったら嫌な話だなぁ・・・。

正ちゃんの入ってる、吟詠の発表会のシーンがとても良いです。春を待つ気持ちって、昔も今も、日本も中国も一緒なんだな、なんてウットリしてしまいます。

珍しく、「私」が男性と関わるエピソードが、ウブで可愛らしいですね(笑)

「六月の花嫁」

私の好きな、江美ちゃんのお話。

私が、この話を読んだ頃、初めて彼氏が出来た頃だったのだけど。誰が読んでも、峰さんカップルよりも江美ちゃんカップルの方が好ましいよね。私も「よーし、あんまり人前でイチャイチャしないゾ!何を内に秘めるのか、それこそが動かしようがない私らしさを作るのだ!」なんて思ったものです・・・。

まだまだお子ちゃまな「私」が、江美ちゃんたちの情事を想像して赤くなったり、峰さんのお化粧に好感を抱いていなかったりしてて、可愛らしいですね。

鷹揚で、しっかり者の江美ちゃん、幸せになってね!

「夜の蝉」

表題作。「私」のコンプレックスである、お姉さんのお話。そして、お子ちゃまな「私」には想像も出来ないくらい大人の恋愛の切ないお話。

「私」の姉は、しっかり者。さらに美人だし、頭もいいし、字も綺麗だし、お化粧、ファッションセンスに至るまで完璧!こんな人が兄弟だったら、そりゃコンプレックスにもなるよ(^^;でも、そんな姉にもどうしようも無いこと、それが恋愛なんだなー、男と女って理屈じゃ付き合えないんだなーってしみじみ感じます。それに、「私」には眩し過ぎた姉の性格も、姉の周りの人達には必ずしも良い方に働いていないっていうことも切ないですね。