ターン

ターン (新潮文庫)
「時と人の三部作」の2作目。


面白いのは、しょっぱなから二人称で書いてあるということ。
「君は、スケッチブックを開いて・・・」とか「・・・と君は思った。」とかね。
ちょっと、読者を突き放してるようにも感じるけど、この書き方に慣れてきたら、もうターンの世界にどっぷり浸かれます。「君」って誰?この人称の主体は誰なの?って感じで引き込まれます。


展開としては、よくあるパターンだと思うんだけど、「毎日同じ日がやってくる、時間に閉じ込められてしまった話」です。ドラマなんかでこういうパターンの見たことあるんだけど、それだと主人公の周りの人間は時間を繰り返している感覚がなくて、主人公だけが永遠に繰り返しちゃうのね。
でも、「ターン」では、時間に閉じ込められるのは主人公の森真希だけ。周りの生きているもの(人間とか動物とか)は全然いないのです。これは孤独だよね。

この孤独感をうまく紛らわしているのが例の二人称で。どうやら、真希は自分の中の誰かと会話をする癖があるらしい。

そして、ある日、時間に取り残された彼女の元に1本の電話がつながり、話は大きく展開していきます。


「ターン」は、映画にもなってるんだけど、時と人というテーマはきちんとふまえつつも、最大のテーマは「男女の愛」だと思うんですよね。

真希と電話でつながる男性との愛は、完璧プラトニックなだけに美しいし切ない。いまどき、手を握らないどころか声だけってのが、ストイックです。しかも、真希にとってその声は幼い頃から自分と共にあったとなれば、この愛は燃えるだろうなぁと。


うーん、一言で言えば、ちょっと俗っぽい感じするんですよね・・・。まあ愛に勝るものなし、なのかもしれませんが。


ラスト、特に柿崎が消えてから終末までが凄くいいです。そこまでの二人称がうまく男性の声に重なって、すごくうまい。あまあまじゃないけど、立派なラブストーリーです。