東野圭吾「殺人の門」

殺人の門 (角川文庫)
読みました。途中から、読むのが辛かったよ・・・。いや、つまらないというわけでは決してなく、続きが気になって一気読みしちゃうぐらいだったんだけど。


主人公の不幸が、先を読まずに分かっちゃうところがいくつかあって、そこが辛かったです。例えば、結婚のところとか。あ、この結婚、うまくいくわけないなって分かっちゃう。それで読み進めていくと、ああやっぱり不幸じゃん、という・・・。暗い気持ちになってしまった。


結局、主人公は、殺意というものは最後まで持ちえなかったと思う。殺してしまってから、殺している最中の気持ちを説明するためには「殺意」という言葉を用いるしかないんだろうけど・・・。
もう一人の主人公、倉持の人生観は恐ろしいが、興味が湧く。もの凄く頭のいい人だ。詐欺をせずとも、十分成功するだろう才能がある。何が彼を詐欺に向かわせるのか、幼い頃からある金銭への執着は途切れることがないのかーーー。


宮部の「火車」が消費者金融についてを描きつつのミステリであったように、この「殺人の門」もマルチとかねずみ講への考察を深めさせてくれるので、主人公の不幸話以外にも読み応えのある内容になっている。